会社によって異なる公共工事参入の仕方
公共工事への参入方法は、会社によって異なります
「公共工事に参入したい」と考えたとき、すべての会社が同じところからスタートするわけではありません。
これまで公共工事の下請として仕事をしてきた会社もあれば、民間工事だけを行ってきて、公共工事そのものが初めてという会社もあります。
また、公共工事の経験があっても、元請として発注者と直接契約した経験があるのか、下請として施工を担ってきたのかによっても、現在地は変わってきます。
だからこそ、
「公共工事に参入するなら、まず経審を受ける」
と一律に考えるのではなく、
「自社にはどのような経験があり、そこからどのような段階を踏んで参入するのがよいのか」
を考えることが大切です。
1.公共工事の経験がない会社の場合
これまで民間工事を中心に行ってきて、公共工事の元請・下請の経験がほとんどない会社の場合です。
この場合、まず考えたいのは、
「公共工事という市場が、本当に自社に合っているのか」
ということです。
民間工事と公共工事では、仕事の取り方だけでなく、契約、書類、工程、品質、安全、検査など、仕事の進め方にも違いがあります。
そのため、
「公共工事は安定していそうだから」
「売上を増やしたいから」
という理由だけで、いきなり本格参入するのは慎重に考えた方がよいでしょう。
まず、自社の強みを確認する
例えば、
・どの工事が得意なのか
・どの程度の規模まで施工できるのか
・技術者・有資格者はどの程度いるのか
・財務内容はどうなのか
・これまでどのような施工実績があるのか
を確認します。
その上で、地域の公共工事を調べ、
「自社の強みと、地域の公共工事市場が合っているのか」
を考えます。
小さなところから経験を積むという選択
公共工事の経験がまったくない場合、いきなり大きな公共工事の元請を目指すのではなく、法令や発注者の制度上可能な範囲で、まず小規模な仕事や公共工事の下請などを通じて、公共工事特有の仕事の進め方を経験するという考え方もあります。
例えば、
・公共工事の書類はどのように管理されているのか
・写真管理はどのように行うのか
・工程管理はどうするのか
・品質管理や安全管理で何が求められるのか
・検査はどのように行われるのか
といったことを、実際の仕事を通じて理解していきます。
これは「小さい工事なら簡単」という意味ではありません。
むしろ、
「公共工事という仕事の進め方に、自社が対応できるのかを確認する機会」
と考えた方がよいでしょう。
その経験を踏まえて、
「自社でも継続して公共工事を受注していけそうだ」
と判断できれば、本格的な参入を検討していく。
2.公共工事の下請経験がある会社の場合
一方、これまで公共工事の下請として仕事をしてきた会社は、スタート地点が違います。
すでに、
・公共工事の現場を経験している
・公共工事特有の書類を知っている
・工程・品質・安全管理を経験している
・公共工事に慣れた技術者がいる
・発注者や元請会社との仕事の進め方を知っている
という可能性があります。
これは大きな財産です。
もちろん、
下請として公共工事を経験していることと、元請として公共工事を受注することは同じではありません。
元請になれば、発注者との契約関係を直接担い、工事全体についてより大きな責任を負うことになります。
しかし、
「公共工事をまったく知らない会社」と「長年公共工事の現場に携わってきた会社」では、明らかに現在地が違います。
ここは、これまで積み重ねてきた経験を活かすべきところです。
3.下請経験を「元請としての力」に変える
下請としての経験がある会社であれば、次に考えたいのは、
「これまでの経験を、自社の元請受注にどうつなげるか」
ということです。
例えば、
これまで施工してきた工事の種類。
工事の規模。
地域。
発注者。
自社が担ってきた役割。
そこで培った技術。
こうしたものを整理します。
その上で、
「この分野なら、自社が元請として受注しても対応できるのではないか」
という市場を絞っていきます。
そして、必要となる技術者体制、財務、許可業種、目標ランクなどを確認する。
つまり、下請経験のある会社の場合は、
「ゼロから公共工事を学ぶ」のではなく、「すでに持っている公共工事の経験を、次の経営段階にどう活かすか」
という視点が重要になります。
4.経験があるからといって、すぐに参入する必要もない
ここも大切です。
公共工事の下請経験があるからといって、必ず元請として入札に参加しなければならないわけではありません。
下請として専門分野に特化する方が、自社の技術力や収益性を活かせる会社もあります。
一方、
「これまで培ってきた技術を自社の名前で受注したい」
「元請として地域との関係を築きたい」
「将来的に公共工事を会社の柱の一つにしたい」
ということであれば、元請参入を検討する意味があります。
大切なのは、
「できるからやる」のではなく、「やる意味があるからやる」
ということです。
5.どちらの場合も、最後は「会社をどうしたいのか?」
公共工事の経験がない会社と、下請経験がある会社。
参入までの道筋は違ってきます。
しかし、最終的に考えることは共通しています。
公共工事を会社の中でどのように位置付けるのか。
売上の何%を公共工事にするのか。
どの業種を柱にするのか。
どの地域で仕事をするのか。
どのランクを目指すのか。
どのような技術者を育てるのか。
そして、
公共工事を通じて、会社をどのような建設会社にしていきたいのか。
ここまで考えて、初めて経審や入札参加資格という具体的な制度が意味を持ってきます。
公共工事参入だけが正解ではありません
公共工事への参入方法には、一つの正解があるわけではありません。
民間工事の経験を土台に、初めて公共工事へ挑戦する会社。
公共工事の下請経験を元請受注へつなげる会社。
あるいは、公共工事には参入せず、民間工事に集中する会社。
どの選択が良いのかは、それぞれの会社の技術、人材、財務、地域、市場、そして経営者が描く将来像によって変わります。
だからこそ、
「公共工事に参加するにはどうすればいいか」
だけではなく、
「自社はどこから始め、どこへ向かうのか」
を考えることが大切です。